Facilitation Program
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造形ファシリテーション能力 獲得プログラム|The Promoting Program for Facilitation Ability of Art and Design

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2009年度 展示会・シンポジウムの報告

 つぎのとおり、概要をご報告いたします。なお報告の全文や参加者からの感想要旨は『2009年度造形ファシリテーション報告書』に掲載いたします。

概要

 2010(平成22)年2月11日(木・祝)より12日(金)までの2日間、本学新宿サテライト(新宿駅西口の新宿センタービル9階)で「造形ファシリテーション展示会・シンポジウム」を開催しました。これは学生の造形ファシリテーション能力獲得の成果公表により造形ワークショップの「記録と表現」活動を促進し、さらに学内外の専門家を招いて一般に公開したシンポジウムなどによって教育活動を促進するために計画されたものです。


準備過程

 この展示会・シンポジウムは、あらかじめ「造形ファシリテーション能力獲得プログラム」の中心となる企画として構想されていたもので、「大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」の申請等で予定されていたものです。
 今回の展示の対象となったのは、「美術と福祉プログラム」をテーマとした教職総合演習Iの4クラス、「旅するムサビ」などの三澤一実教授指導の課外活動、さらに視覚伝達デザイン学科の齋藤啓子教授担当の授業や課外活動などです。これら各グループの学生による「記録と表現」活動を10月より2010年1月にかけて進めることができました。
 また学生の展示を美術大学としての教育上の特徴として分かりやすく表現するためにも、全体としての取りまとめが重要な課題となりました。このため、運営チームでの検討をすすめ、ファシリテーション情報室で担当教員との展示物の分量や必要資材の調整をおこなうとともに、清水恒平氏がデザイナーとしてサイン計画や展示計画を指導しました。さらに運営のために学生から「学生スタッフ」を募り、会場設営と会場の説明の担当としました。
 学外への広報としては、チラシ、ポスター、葉書を作成して全国の大学、関東近辺の美術館、関係諸機関へ配付しました。またホームページにも記事を掲載した。また、昨年までの大学の関連企画に参加した個人・団体にも名簿に基づいて送付しました。
 なお、本年度第2回の外部評価委員会を2月12日に会場で開催することを計画して、外部評価委員には展示会場を回覧して学生と担当教員から展示を含めた説明を行うことで、「記録と表現」のあり方や社会への公開を含めて意見を受ける重要な機会としました。


当日の概況

(1)来場者の内訳
 スタッフを除く当日の参加者人数は、11日(木・祝)119名、12日(金)77名の合計196名です。内訳は本学学生56名、一般(本学卒業生を含む)56名、学校・社会福祉施設・行政機関職員(本学教職員を含む)など84名です。とくに展示説明の質疑応答などでは、学外の専門家、とりわけ美術館学芸員や社会福祉団体職員、小中高等学校の教員などの存在が際立ちました。今回の展示会の先行する参考例とした「美術と福祉プログラム」では4日間実施で2006年度104人、2007年度95人、2008年度173名であったので、2日間で実施した今回の参加者は増加したことになります。また、学校教員や生涯学習機関職員では、過去の展示会と通して参加したと自己紹介してコメントをくださる方も多く、本学の造形ワークショップの取組全般への期待があることがわかりました。


(2)展示について
 展示は2つの教室を連結使用して、2日間を通じて11時から5時まで実施した。教職総合演習Iの岩崎クラス、葉山クラス、杉山クラス、川本クラスの合計4クラス6施設が「美術と福祉プログラム」における学生の「記録と表現」をテーマに展示を行いました。また三澤教授の指導する学生課外活動は、「旅するムサビ」「東大和スクールアートプロジェクト・ムサビる」としてパネル展示とビデオ上映をおこないました。また齋藤教授の指導する視覚伝達デザイン学科のとりくみは、「小さな夏休み」「異才たちのアート展」「歌舞伎町未来年表」をテーマとして、パネル展示などを行いました。
 受付や学外からの来場者の対応については、教職課程研究室、ファシリテーション情報室・教職資料閲覧室のスタッフがあたりました。受付では武蔵野美術大学出版局が関連書籍の観覧や目録配付をおこないました。


(3)シンポジウム「ワークショップとは? ファシリテーションとは?」
 2月11日1時から4時30分まで、シンポジウム「ワークショップとは? ファシリテーションとは?」が開催されました。当日の進行順序は下記のとおりです。

挨拶
 甲田洋二氏(本学学長)

趣旨説明・コーディネータ
 高橋陽一氏(本学教職課程教授・取組担当者)

パネリスト
 前田ちま子氏(名古屋芸術大学 美術学部 教授)
「経験的ワークショップ 〜子どもと学生、シニアと学生のかかわりから〜」
 苅宿俊文氏(青山学院大学 社会情報学部 教授)
「ワークショップデザインの人材育成という視点から」
 高橋直裕氏(世田谷美術館 学芸員)
「地域美術館におけるワークショップの可能性」
 齋 正弘氏(宮城県美術館 教育普及部長)
「(教育の)主体のありようとファシリテータの立ち位置」

コメンテータ
 齋藤啓子氏(本学視覚伝達デザイン学科教授)
 三澤一実氏(本学教職課程教授)
 当日は50名前後の参加者と予想していたのですが、110名程度の会場人数となり10分の休憩を入れて、120名収容の会場に模様替えを行いました。こうした予想外の事態がありましたが会場は熱心な雰囲気で質疑応答まで進行しました。この挨拶、趣旨説明、4名のパネリストの報告内容はこの『報告書』に概要を掲載します。なお会場の狭さでご迷惑をかけしたことをお詫びいたします。



(4)講義「美術とわたし」
 展示会第2日目である2月12日(金)午後1時からは、岩崎清氏(元こどもの城造形事業部長・本学講師)による講演「美術とわたし」が実施されました。高橋陽一取組担当者から本年で武蔵野美術大学講師を定年退職となる岩崎清氏の業績が紹介されました。講義では、タイトルの「美術とわたし」のとおり、岩崎氏の青年期からの美術の関わりが語られました。副題「アート、もう一つのコトバ?ブルーノ・ムナーリを手がかりに」として、こどもの城にも招聘されて造形ワークショップを行ったブルーノ・ムナーリの人物像、絵本をはじめとした作品などが提示されました。この講演の内容も、この『報告書』に速記を掲載します。


(5)シンポジウム「美術と福祉とワークショップ」
 2月12日(金)の午後3時からはシンポジウム「美術と福祉とワークショップ」が行われた。パネリストとして葉山登氏(川村学園女子大学准教授・本学講師)、杉山貴洋氏(白梅学園大学准教授・本学講師)が登壇しました。川本雅子氏(本学教職課程・芸術文化学科講師)の報告はコーディネータとして高橋陽一取組担当者が文章を代読しました。
 葉山氏、杉山氏、川本氏からは、本年度の美術と福祉プログラムでの学生の実践が紹介された。葉山氏からは美術と福祉プログラムの根拠となる介護等体験法の「個人の尊厳」や「社会連帯の理念」が強調され、また川村学園女子大学での造形ワークショップの取り組みとあわせて、造形ワークショップの可能性が語られました。杉山貴洋氏からは、白梅学園大学が障害のある子どもとその家族とともに取り組む「しらうめ・だれでもアート作戦」の概要が紹介されて注目を集めました。コメンテータの長沢秀之氏(本学油絵学科教授)からは、「コトバ」をキーワードとして、美術大学の学生が困難さに立ち向かい、コミュニケーションという課題にアートがどう向かい合うかを油絵学科の教育と今回プログラムとの関係で述べられました。


(6)今後に向けて
 2日間の「造形ファシリテーション展示会・シンポジウム」は、「記録と表現」を特色とする教育の一環としてその成果を社会に発表するためにも、また学内外の専門家によるシンポジウムによって専門的知見を掘り下げていき共有するためにも、効果がありました。
 参加者からも多くの意見や感想がありました。学生による「記録と表現」の課題、さらに大学における「造形ファシリテーション能力獲得」という教育課題について考えるべき大切な課題があります。2010年度もこうした「展示会・シンポジウム」の実施を構想していますが、今回の感想や反省材料を踏まえて、さらに充実した物を目指していきたいと思います。