2011年度 展示会・シンポジウムの報告
概要
2012(平成24)年1月27日(金)より29日(日)までの3日間、武蔵野美術大学新宿サテライト(新宿駅西口の新宿センタービル9階)で「造形ファシリテーション展示会・シンポジウム」を開催しました。これは学生による造形ファシリテーション能力獲得の成果公表や、造形ワークショップの「記録と表現」活動を促進し、さらに学内外の専門家を招いて一般に公開したシンポジウムなどによって教育活動を促進するために計画されたものです。
過去の展示会は、2010(平成22)年2月11日-12日の2日間、2011(平成23)年1月28-30日の3日間で実施しましたが、今年も3日間で行いました。以下に概要を掲載します。なお、参加者から頂いた感想文の概要をはじめとした企画報告の全文は、2011年度『報告書』に掲載する予定です。
準備過程
この展示会・シンポジウムは、「造形ファシリテーション能力獲得プログラム」の中心となる企画として構想され、
「大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」の一環として予定されていたものです。2010年4月から授業科目「ワークショップ研究Ⅰ」、同「Ⅱ」及び「美術と福祉」5クラスでも説明して、教員と学生が準備をしました。また、シンポジウムの内容の充実に力を入れ、運営チームの会議で、招聘するゲストとの連絡調整などにあたりました。今回の展示は、「美術と福祉プログラム」をテーマとした「美術と福祉」の5クラス、新設授業科目「ワークショップ実践研究Ⅰ」と同「Ⅱ」、「旅するムサビ」などの三澤一実教授指導の課外活動、視覚伝達デザイン学科の齋藤啓子教授担当の授業や課外活動などです。
学外への広報としては、チラシ、ポスター、葉書を作成して全国の大学、関東近辺の美術館、関係諸機関へ配付しました。またホームページにも記事を掲載しました。また、昨年までの大学の関連企画に参加した個人・団体にも名簿に基づいて送付しました。本企画は『読売新聞』1月19日朝刊にも掲載されました。
報道・大学・機関等で、ポスター掲示などのご協力を得たことをこの場を借りてお礼申し上げます。
当日の概況
来場者人数は、2012年1月27日(金)10名、28日(土)102名、29日(日)74名の合計186名でした。内訳は、一般・卒業生が62名、学校・施設・行政・報道が68名、本学教職員・学生が56名でした。昨年は合計149名なので、昨年度よりは増加しましたが、学外では大学・小中高の教員、美術館学芸員、社会福祉、地方行政、企業団体関係者など様々な立場の方々が来場されました。
展示は2つの教室を連結使用して、3日間を通じて10時30分から5時まで実施しました。「美術と福祉」5クラス6施設が「美術と福祉プログラム」における学生の「記録と表現」をテーマに展示を行いました。また三澤一実教授の指導する学生課外活動は、「旅するムサビ」関連はパネル5面とビデオでの上映をおこないました。齋藤啓子教授の指導する視覚伝達デザイン学科のとりくみは、パネル12面と机上の実物による展示を行いました。
学生によるワークショップ発表会
今年度は3つの枠で、それぞれ60分づつ、学生自身による「ワークショップ発表会」をおこないました。
1月28日(土)午前11時より60分間(実際には80分間)の枠では、「地域では」と題して運営チームのメンバーである齋藤啓子教授(視覚伝達デザイン学科)がコーディネートした6つのワークショップの発表が、学生による司会進行でおこなわれました。課外で行われた企画として、①学園坂ストリートギャラリー(小平市)、②ルネ小平・芸術家と子どもたちとの出会いフェスティバル(2011年8月小平市)、視覚伝達デザイン学科空間構成・環境クラスとして、③ちいさな夏休み(「くわくわ島」)、④おいでよ!わたしたちのまち(小平市の都道と小学校での取り組み)、⑤cocoro recipe ココロレシピ(DV対策啓発)、⑥けやきワークショップ、以上です。
同28日(土)午後3時から90分は、「美術と福祉」として、小平市内の社会福祉施設で造形ワークショップを行った学生たちによる発表が行われ、担当教員からコメントとあわせて発表されました。①あさやけ作業所サマースクール、②あさやけ第3作業所・風の作業所、③けやきの郷、④やすらぎの園、⑤小川ホーム、⑥曙光園で介護等体験をおこない造形ワークショップに取り組んだ学生たちです。コメンテータは、葉山登氏(川村学園女子大学准教授・本学講師)、杉山貴洋氏(白梅学園大学准教授・本学講師)、川本雅子氏(本学教職課程・芸術文化学科講師)、鈴石弘之氏(市民の芸術活動推進委員会理事長・本学講師)が担当しました。状況をプロジェクタに映したり、ビデオ編集の紙芝居を紹介したりと発表内容は多岐にわたりました。
続いて翌日29日(日)午前3時より60分間の枠では、「学校では」と題して、運営チームの三澤一実教授(教職課程研究室)がコーディネートした2つのワークショップ企画が発表されました。①「旅するムサビ」として学生が小中学校に赴いてワークショップや鑑賞の授業を行う取組の最近の実例が報告され、子どもと教師と学生による協働が強調されました。さらに②School Art Project 「ムサビる」では、東京都東大和市立東大和第二中学校でおこなわれた取組が紹介されました。学生の司会深更による討議では、前日の発表とあわせて、美術の意味、美大生の役割などが実例に則して学生から提起されてディスカッションが行われました。
シンポジウム「ワークショップで地域は変わる」
1月28日(土)午後3時から90分、シンポジウム「ワークショップで地域は変わる」がおこなわれました。パネリストは、東谷千恵子氏(世田谷美術館 主任学芸員)が「市民のためのワークショップ・美術大学―世田谷美術館の事例から」と題して報告し、さらに稲庭彩和子氏(東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長)が「美術館の教育普及のこれから―物語、対話、共感を通じた実践コミュニティの創造」と題して報告しました。コメンテータは保坂みどり氏(国分寺市光公民館 館長)がつとめ、司会はコーディネータの齋藤啓子氏(本学教授・視覚伝達デザイン学科)があたりました。世田谷美術館の地域住民のための「美術大学」や「鑑賞リーダー」の取り組み、東京都美術館のリニューアルに向けた「とびらプロジェクト」など、美術館の教育普及活動が新しい展開をとげている様子が報告されました。報告内容や主な討議内容は、本年度『報告書』に概要を掲載します。
シンポジウム「ワークショップで学校は変わる」
29日(日)午後1時から午後4時30分までの3時間30分にわたって、シンポジウム「ワークショップで学校は変わる」がおこなわれました。冒頭に挨拶が甲田洋二氏(本学学長)から述べられて建学の精神に基づく本学の美術教育から小中高等学校の美術教育へ貢献する姿勢が強調され、さらに司会進行にあたったコーディネータ高橋陽一よりパネリストの紹介や「造形ファシリテーション能力獲得プログラム」の取り組みが紹介されました。
報告では3人のパネリストから30分づつのお話しがありました。①三澤一実氏(本学教授・教職課程)からは「協働性、双方向性の学びとしてのワークショップ」と題して、②未至磨明弘氏(東大和市立第二中学校教諭)からは「『ムサビる!』によって何が変わったか。生徒の変容、学校の変容」と題して、さらに③東良雅人氏(文部科学省教科調査官・国立教育政策研究所教育課程調査官)からは「ワークショップの役割-今日の教育行政の動向から」と題して報告がありました。休憩をはさんでコメンテータ3名からの発言があり、①永関和雄氏(町田第三中学校校長)、②米徳信一氏(本学教授・芸術文化学科)、③長沢秀之氏(本学教授・油絵学科)から学校での美術教育や造形ワークショップの役割について提起がありました。その後、司会進行はコーディネータの高橋陽一氏(本学教職課程教授・取組担当者)があたって質疑応答も含めて60分程度のディスカッションが行われました。なお、挨拶、趣旨説明、報告、コメント、討議については概要を本年度『報告書』に概要を掲載します。
その他
二つのシンポジウムについては、会場の都合上「シンポジウム事前予約」の事前手続きをよびかけ、予約者は28日38名と29日48名(昨年は11名と25名)にのぼりました。また、本学の教育成果を社会に発信する取り組みとして、武蔵野美術大学出版局の刊行物を受付の横で展示したことについても、見学後に足を止めて閲覧する方が多くいました。第2日目には、第2回外部評価委員会を12日午後5時30分に本会場で実施し、外部評価の参考として展示を案内して学生による展示説明も実施しました。
本学の教育の改善に生かすために、参加者に感想用紙を受付で配付して協力を呼びかけました。この概要も本年度『報告書』に掲載します。とくに、学生自身が語ったワークショップの企画に多くの感想やアドバイスが外部の専門家から寄せられ、励みになりました。またシンポジウムでは、地域や学校教育などに果たすべき造形ワークショップの意義をめぐって実践に関わる方々から感想が寄せられています。
3年間の「造形ファシリテーション能力獲得プログラム」への文部科学省の支援期間は2012(平成24)年3月で終了となりますが、これまでの蓄積を武蔵野美術大学の教育に生かすとともに、地域や学校教育に貢献できる活動を続けていきたいと考えます。
この場を借りてご来場のみなさま、ご協力いただいた関係各位に重ねて御礼申し上げます。
「2011年度造形ファシリテーション展示会・シンポジウム」来場者へのお礼とご報告
このたびは武蔵野美術大学「造形ファシリテーション能力獲得プログラム」(平成21年度文部科学省選定)の平成23年度の成果発表として、2012(平成24)年1月27日から29日の3日間に開催された「造形ファシリテーション展示会・シンポジウム」に多数のご来場を迎えることができました。ご来場の方々、周知にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
新宿サテライト会場への来場者・シンポジウム参加者は、186名となり、またお願いしたシンポジウムの事前座席予約も28日38名と29日48名の方々にお申し出を頂きました。
この展示会・シンポジウムの概要を含めまして、現在『造形ファシリテーション能力獲得プログラム2011年度報告書』を編集しており、3月に刊行を致します。また皆様から頂いたご感想・ご要望も今後の改善のための大切な資料となり、同『報告書』に一部抜粋の上掲載させて頂きます。ご来場いただいた方々には、学外は郵送し、学内は7号館教職資料閲覧室にて配付いたしますので、よろしくおねがいします。